不動産を相続するケースは比較的多くあります。
実際、相続財産の⾦額の構成⽐は令和3年分だと土地が全体の33.2%、家屋が全体の5.1%となっています。
※出典:国税庁「令和3年分相続税の申告事績の概要」より
今回は不動産の相続を行うかもしれない場合や、不動産を相続することになったときに役立つ、遺産分割や不動産の査定や評価方法についてご紹介いたします。
相続した不動産を売却する場合の流れは以下の記事をご参考ください
コラム:相続した不動産を売る。相続物件を売却する流れとは?
目次
不動産を相続することになったら何をする?
不動産を相続することになったときの流れとしては以下の通りです。
- (1)遺言書の有無を確認する
- (2)相続人・相続財産を確定する
- (3)遺産分割協議を実施する
- (4)動産の名義変更を行う
- (5)相続税の申し込みと納付を行う
ひとつひとつご説明させていただきます。
(1)遺言書の有無を確認する
相続することになったら、まずは遺言書の有無を確認してください。
遺言書があった場合はその内容に従って基本的には相続を進めていくことになります。
遺言書が見つかったら
遺言書があった場合、勝手に開封してはいけません。遺言書の種類によっては家庭裁判所で検認を行う必要があります。検認を受けず、勝手に遺言書を開封した場合、5万円以下の過料が課せられます。
遺言書の種類
遺言書は正確な日時や氏名、押印など様式のルールがあり、また遺言書の種類は3種類あります。
1.自筆証書遺言
自筆遺言とは、作成者が財産目録を除いた全文を自筆で書いた遺言書です。特別な手続きは不要で、紙とペンと押印で作成可能な反面、法律の観点から内容に不備がある、様式が守られていない等の場合は無効となってしまいます。
法務局による自筆証書遺言書保管制度では自筆証書遺言書を預けることが出来ます。
自筆証書遺言書保管制度:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
本人が保管していた場合、検認手続きが必要となりますが、法務局が保管していた場合の検認は不要となります。
2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場の公証人が証人2名以上の立ち合いのもとで作成する遺言書になります。公証人に相談し、助言をもらいながら作成することが可能です。
公正証書遺言の場合、検認は不要です。
3.秘密証書遺言
本人以外、内容を見ることが出来ないよう秘密にされた遺言書の形式です。秘密証書遺言は、公証役場に持ち込み、存在を公証人と証人2人以上に証明してもらう必要があります。
遺言書が見つかった場合、検認は必要となります。
それぞれの種類について
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成者 | 本人 | 公証人 | 本人(代筆可能) |
費用 | 特に無し | 公証役場手数料 | 公証役場手数料と作成手数料一律11,000円 |
秘密 | 可能 | なし | 内容のみ可能 |
保管場所 | 本人/法務局 | 公証役場 | 本人 |
検認手続き | 本人:必要 法務局:不要 |
不要 | 必要 |
検認の方法と必要なもの
検認の申し立てを、遺言者の最終住所を管轄する家庭裁判所にて行う必要があります。その際必要な書類は以下の通りです。
- ・検認申立書(作成する必要があります)
- ・遺言者の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
- ・相続人全員分の戸籍謄本
(2)相続人・相続財産を確定する
相続人調査を実施し法定相続人を明確にする
遺言書が遺されていなかった場合は法定相続人が財産を相続します。
そのため法定相続人が誰かを明らかにする必要があり、戸籍を調べ証明していく必要があります。
その法定相続人を証明していく調査を相続人調査と言います。もし相続人調査をせず漏れがあった場合、遺産分割協議は無効になってしまいます。
相続財産調査を実施し財産を明確にする
被相続人の所有していた現金や株式や不動産などのプラスの財産、借金やローンなどのマイナスの財産を含むすべての遺産を調べ、適正に評価・査定する必要があります。
相続財産調査の期限①相続放棄や限定承認は知った時から3か月以内
相続人は相続開始を知ったのち、すべての財産を相続する(単純相続)、すべての財産を放棄する(相続放棄)、プラスの財産の範囲内でマイナス財産を相続する(限定承認)のいずれかを選ばなければなりません。
しっかりと検討を行うために、相続財産調査は重要になります。
単純相続を選択した場合、相続人が複数人いる場合は全員で遺産の分割を話し合う遺産分割協議の実施になります。
一方で相続放棄や限定承認を選択した場合、被相続人が死亡したことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に書類を提出し申し立てを行わなければなりません。
相続調査の期限②相続税の申告は知った日の翌日から10か月以内
単純相続や限定相続など、相続をした場合には相続税の申告を行わなければなりません。
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
相続調査の必要性
相続税申告の必要・不要の確認のため相続財産調査は重要となります。
また、相続税の申告後、記載していなかった財産が発覚するなどして申告した相続税に誤りがあった場合には申告漏れとなってしまうため、相続財産調査もしっかりと正確に行う必要があります。
財産目録の作成
財産目録の作成は必須ではありません。
しかし、単純相続か相続放棄か限定相続かの判断、相続税の申告の必要・不要の判断、相続人全員が遺産の全容の把握を行う、遺産分割の相談を具体的に行うことが出来るなど作成のメリットは多くあります。
(3)遺産分割協議の実施
相続人が複数いる場合、遺産分割協議を実施します。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分割を協議し合意することです。
遺産分割について全員の合意が得られたのち、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は相続登記や相続税申告等の手続きの際に必要となります。
遺産分割協議書に必要な記載事項
- ・被相続人の名前、住所、死亡日
- ・相続人全員が合意している旨
- ・相続財産の具体的な内容
- ・相続人全員の名前、住所、実印の押印
(4)相続不動産の名義変更
不動産の相続を行う際に、所有権を移転させる名義変更を相続登記と言います。不動産を売却する場合、名義変更は必要になります。相続登記の申請は不動産所在地の法務局にて行えます。
なお、相続登記は法改正により2024年4月より義務化されるため、所有権を有する人が亡くなった場合、相続人への名義変更が必須になります。
相続登記に必要な書類
- ・登記事項申請書
- ・遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書
- ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本及び除籍謄本
- ・被相続人の住民票の除票
- ・相続人全員の戸籍謄本
- ・相続関係説明図
- ・固定資産評価証明書
- ・相続登記申請書
相続登記が完了したら売却を行うことが出来るようになります。
(5)相続税の申し込みと納税を行う
相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。ただし、すべてのケースで相続税を納税しなければならないわけではありません。
相続税の申告が必要かどうかは、遺産総額の合計が相続税の基礎控除より大きい場合は必要。基礎控除以下であれば申告手続きを行う必要はありません。
相続税の申告が必要となった場合、被相続人の住所の税務署に申告し、納税を行うことになります。相続税の評価や計算方法は一般的ではなく手続きも煩雑となっているため、公認会計士や税理士などの専門家に相談する形が一般的です。
以上が不動産を相続することになった場合の流れになります。
相続した不動産の売却する場合の流れは以下のコラムをご参考ください。
コラム:不動産を相続したらどうする?相続物件を売却する手順についてご紹介
相続した不動産の分割方法について
不動産を複数の相続人が相続する場合どうすればいいのか。現金であれば簡単に分けることが可能ですが、土地やマンションだとそういうわけにはいきません。
一戸建てやマンション、土地を相続した場合いくつかの分割方法があります。
ここではそれぞれの分割方法についてご紹介させていただきます。
現物分割
現物をそれぞれの相続人が相続する方法となり、相続においては一般的な分割方法です。
例えば、配偶者が不動産であるマンションを相続し、長男が株式、長女が現金を相続する。といったように、それぞれをそのまま相続する遺産分割方法です。
不動産などを現金化する必要が無く、手続きも簡単です。
代償分割
代償分割は、現物を相続した人が相続していない人に対して代償金を支払い、遺産を平等に分割する方法です。
例えば、配偶者が2,000万円のマンションを相続し、長男が500万円の株式、長女が500万円の現金を相続した場合、配偶者は現金で長男・長女に500万円ずつ代償金を支払います。そうすると、それぞれが1,000万円ずつ遺産を受け取ったことになり、平等に分割することが出来ます。
代償分割はある程度の資金が必要になります。
換価分割
換価分割は、一戸建てやマンション、土地などの不動産を売却し、売却で得た現金を分割する方法です。例えばマンションを3,000万円で売却し、配偶者・長男・長女でそれぞれ1,000万円ずつ受け取る。といった分割方法です。
売却完了まで時間はかかりますが、平等に分割することが可能です。
共有分割
共有分割とは、複数の相続人で共有して相続する形です。
不動産を共有名義にするなどして共有する形となりますが、例えば不動産を一度共有してしまうと、いざ売却したくなっても全員の合意が必要となります。
遺産分割方法の中ではトラブルになりやすい方法となっています。
まとめ
不動産を相続するとわかった場合、その不動産に住み続けるのか、売却するのかなどを決める必要があります。また、相続人が複数いる場合、それぞれが合意できる形で遺産分割協議を行う必要があります。
当社では不動産売却の仲介や買取はもちろん、司法書士や引越しまでトータルでサポートしております。
もし売却をご検討するとなった場合は是非一度お気軽にご相談ください。